議会質問

都議会質問 意見陳述 文書質問 意見書可決

厚生委員会(福祉保健局) 議事録

2012年09月28日

東京都婦人保護施設の設備及び運営の基準に関する条例

(1) これは、一括法に自分の制定に伴い、都条例を定めたものですが、まず、今回の条例が新設されるにあたって、婦人保護施設の方々の意見を聞く機会はあったのでしょうか?
(2) 婦人保護施設の設備・運営の基準に関する条例について、婦人保護施設自体は売春防止法を設置根拠とし成人を保護する施設であるのに、「児童福祉施設の設備及び運営の基準に関する条例」の基準と同内容の項目が採用される理由をおしえてください。
(3) 児童福祉施設の中でも母子生活施設を参考にしたということかと思います。婦人保護施設では、児童同伴の方がどの程度いるのか、単身の方はどれくらいなのかおしえてください。
児童同伴の方に配慮するのは必要ですが、本来は、売春防止法を設置根拠とする施設であり、婦人保護の施設であるということを忘れないでいただきたいと思います。職員の方々の意識の中にも醸成していただきたいと考えます。
(4) 第11条の「衛生管理等」に関して、都は独自に入浴や清しきの条文を設けていますが、どのような背景があって盛り込まれたのかご説明いただけますか?
婦人保護施設に限らず、入所施設は、感染症等を予防する観点から衛生管理が必要であるとのことです。4項の「入所者の希望等を勘案し、清潔を維持できるよう入浴させ、又は清しきしなければならない」は、施設の責務と理解しますが、婦人の尊厳というものを考えたときに、法律と同じ文言であっても、表現として適当かどうかと懸念いたします。本来であれば、「清潔を維持できるよう、入浴、清しきするための施設を整えなければならない」等の文言が適当だったのではないか、意見として申し上げます。
(5) 第18条の「業務の質の評価等」では、定期的に外部の者による評価を受け、公表とされていますが、評価項目は、婦人施設としての評価基準になっているのでしょうか?
(6) 婦人保護施設は、1956年(昭和31年)の売春防止法が根拠となって設置されていますが、現在ではさまざまな理由で保護されている方もいると聞いております。そこで、売春防止法に基づく入所者はどのくらいいるのか、また、その他の理由はどのようなものなのかお伺いいたします。併せて、多様な入所者に対して、どのようにケアを行っているのか伺います。
さまざまな事情で入所する方がいることはわかりました。当然ながら、すべて同じように扱うことだけが平等ではありません。それぞれの事情、健康状態を見ながら、対応を考えていくことが必要です。2009年の厚生委員会で少子社会対策部長が「婦人保護施設の目的や利用実態に照らしますと、まず何よりも安全で安心して生活できる場所の提供、それから暴力等で傷ついた人へのケアが大切」という旨を答弁されていました。施設の設立当初とは異なるさまざまな利用者に合わせて、きめ細やかなケアをしていただけるよう改めてお願いをいたします。

(7) 今回の条例提案は、婦人保護施設の人員配置などの基準を定めることが目的ですが、東京都は、平成23年4月に都立の婦人保護施設「新生寮」を民間移譲しています。移譲前の質疑では、移譲前後で、職員の人員配置は変わらないというご答弁がありましたが、最低基準が定められたことにより、職員配置に影響がないのか伺います。
是非人員配置をはじめサービスの質が下がることのないようにしていただきたいと思います。
今回児童福祉施設の基準に合わせて条例が設定されています。対象が異なるのに同じ基準にすることが適切かどうかを再考する機会と捉えました。
売買春問題ととりくむ会が7月に厚生労働大臣等に法改正の要望書を提出しています。そこでは現行法のように、売春女性に重い負担をかけるのではなく、「性を売る女性を支援の対象にすること」や彼女たちが活用できる社会資源であることを知らせるなど、婦人保護事業の強化、すなわち自立への支援を要望しています。
今回の条例で対象の施設は、婦人保護事業の拠点となるところなので、東京都としての婦人保護の受け皿として認識し、充実していただきたいと思います。先ほど民間委譲後の体制の確認をいたしましたが、民間になったことでより柔軟な運営をしていくことも可能と考えます。是非女性の尊厳を大切にし、都のいうところの自立につながる施設としてご努力いただけるよう要望をいたします。

地方独立行政法人東京都健康長寿医療センター中期目標について

「東京都健康長寿医療センター」は、高齢者医療及び研究の拠点として、高齢者の医療の充実と健康維持・増進を目指す研究に長きに亘り取り組んできました。超高齢社会において大きな役割を果たす施設であると感じております。先日視察もさせていただきましたが、トランスレーショナル・リサーチとしてさまざまな課題に取り組むための医療と研究の連携、ブレインバンクで臨床データ・病理組織をデータベース化していくこと、また健康な脳との比較をしていくことで認知症発生のメカニズムを研究するなど重要な役割を担っている施設です。進行する高齢社会の中で、要介護にならない期間を1年長くするだけで大変な経済効果であるというお話も伺い、社会に貢献する貴重な施設であると
認識しています。この度、平成23年度の業務実績評価書の報告と共に次期の中期目標が提出されていますので、質問をいたします。
(1) 平成25年度から第二期中期目標となるわけですが、第一期中期目標中に明らかになった課題にはどのようなものがあるのか、まず伺います。
(2) 病院と研究機関が一緒になっているという特徴を有するセンターですが、その成果を社会に還元していくことが大変重要になってきます。具体的にどのように地域の医療機関と治療法などの情報を共有しているのでしょうか?また、医療と介護の連携モデルとして発信するとしていますが、板橋ナーシングホームの民営化施設との連携はどのように行うのか伺います。
是非積極的に情報提供をして、医療の向上に役立てていただきたいと思います。また、板橋ナーシングホームは、これまでも退院後における高齢者の在宅生活を支えてきたと聞いています。民営化後も密な連絡により、医療の成果が活かされるようお願いいたします。また、モデル事業を経て、広く活かされる医療と介護連携に取り組んでいただけるようお願いいたします。
(3) 平成21年に地方独立行政法人化をしてから3年です。今回の中期目標に業務経営の改善及び効率化に関する事項として、地方独立行政法人の特性を活かすとありますが、具体的にはどのような特性を考えているのか伺います。
さまざまな経営形態があるとは思いますが、病院としては医療の低下を招かないこと、そして充実させることが何よりも必要と考えます。柔軟な対応により年度途中でも緩和ケア内科や救急診療部が設置できたとのことで、メリットを今後も活かしていただきたいと思います。
(4) 健康長寿医療センターは、平成24年4月から「認知症疾患医療センター」として運営を開始しました。東京都には、基本的に二次保健医療圏ごとに認知症疾患医療センターがあり、現在10か所となっています。健康長寿医療センターの専門医療相談室でも、多くの相談を受けているとのことでした。認知症疾患医療センターの役割には、専門医療相談の実施、認知症の診断と対応や地域連携、情報発信などいくつか挙げられますが、今後増えてくるであろうと思われる認知症の相談や医療の提供にどのように対応していくのか伺います。
認知症疾患医療センターが現在10か所ですが、二次医療圏ごとということで、あと2か所も早期に指定していただき、都内各地域での体制を確立していただけるよう要望をいたします。
(5) 認知症は、初期で治療を始めれば、進行を遅らせることができると聞きます。ところが、実際には「もの忘れ」と勘違いしたり、年齢のせいにして気にしないようにしたりなど、医療機関を訪ねたときにはすでに進行が進んでいると聞きます。健康長寿医療センターでは、啓発や患者・家族への周知についてどのように取り組まれるのか伺います。
認知症を患うと、本人はもちろんですが、家族のショックが大きいと聞きます。連れ合いや子どもは理解できず、または認めることができず、結果暴力に到るケースもあるそうです。医療としての知識を一般にも普及できるよう取り組みの充実を要望しておきます。
最後に、認知症に関して、若年性認知症についても、触れておきたいと思います。
65歳未満で発症する若年性認知症の人は都内で約4千人とも言われており、認知症高齢者と比べると非常に少数です。
しかし、40歳代、50歳代という働き盛りで発症する若年性認知症の人や家族の多くは相談相手もなく孤立した状態の中で、介護保険サービス等の支援制度を十分に活用できず、深刻な経済的負担や心理的負担を抱えながらの生活を強いられるという、若年性認知症ならでは難しさがあるといいます。私の知人で若年性認知症を発症し、仕事を辞めなくてはならず、ひとり暮らしでこのまま進行していくのが心配だという方がいます。私の地元江戸川区には、若年性認知症に特化したデイサービスを行っている施設も1箇所だけありますが、一般的な施設では高齢者向けのデイサービスしかありません。介護保険は利用できるものの、高齢者を想定したケアであるために馴染めないという課題があるようです。

このように、若年性認知症は、高齢期に発症する認知症とは病理学的な違いはないものの、異なる問題や課題が存在し、社会的な対策は遅れています。
病理学的な研究のみならず、社会科学系の分野でも認知症研究に取り組んでいる健康長寿医療センターの幅広い研究の成果に今後も期待いたします。